来年4月からの電力自由化で小売電気事業者の登録申請が始まりなした。なにが、どのように変わるのか?そして契約のメリットは? その基礎知識をできるだけわかりやすく解説してみました。

8月3日新規電力の登録開始 小売り自由化、初日は24社が申請:日本経済新聞
http://s.nikkei.com/1TSFrDZ

8月4日家庭向けの接続料金は7~8円台に、電力会社10社が国に認可を申請 – スマートジャパン
http://bit.ly/1J3h8J2

8月18日東京電力 事業会社名を発表 電気は安くなるのか:ワールドビジネスサテライト
http://bit.ly/1LkmdCH
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(映像は、こちらから)
この映像ニュース(約12分)は、いま何が起きているのか分かりやすいかと思います。


http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_95798
東京電力 分社化を発表(ワールドビジネスサテライト)

 

電力自由化の範囲、小売電気事業社とは

50kW以上の「高圧」部門は、既に自由化になっています。
50kW未満の「低圧」部門が、来年4月から自由化になります。

低圧部門の販売量は全体の約1/3ですが、大手電力会社にとって収益の柱はこの低圧部門です。既に自由化されている高圧部門は新電力(PPS)との競争、特に東日本大震災以降に新電力に契約変更する企業や自治体が増加し、収益は厳しい状況です。

そこを守りたい大手電力会社と攻めこむ新電力との戦いが、他業種も巻き込み始まろうとしてます。

 

電力自由化のスケジュール

出典:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会制度環境小委員会

電気事業法が改正され、2020年に「発送電」分離されます。そてに備えて東京電力が分社化を発表しました。
発電:東京電力カフュエル&パワー
送電:東京電力パワーグリッド
小売:東京電力エナジーパートナー
なんとも記憶しづらい社名ですが決まりました。

一般電気事業者大手電力会社)とは、東京電力など10社のことです。

特定規模電気事業者、いわゆる新電力(PPS)は、50kW以上の高圧部門の販売会社で、2011年は約50社程度でしたが、現在は734社と急激に多くなりました。しかしこれは「届出制」なので実働しているのは半分以下。積極的に展開しているのは100社以下だと思われます。

小売電気事業者とは、低圧部門の販売会社のことで8月3日より申請が始まりました。これは「登録制」なので審査をパスする必要があります。大手電力会社10社と新電力734社の全てが申請すると思われますので、電力小売の戦国時代がいよいよ始まります。

 

一般電灯契約と低圧契約が自由化に!

契約変更への基礎知識を知って、賢く契約を切替え、もしくは継続の判断をしましょう。

自由化になる低圧とは「一般電灯契約」と「低圧契約」の2種類があります。

一般電灯契約(電灯)は、100Vの契約で照明や家庭用エアコン用で、契約数は約8000件です。
低圧契約(低圧)は、200V契約で業務用エアコンなど動力用で、契約数は1/10の約800件です。

飲食店、美容院など冷暖房を常時使用する店舗では、電灯と低圧の2つの契約になっています。
その他、動力機器を使用する工務店や小工場、給水設備やエレベータなどがあるマンションなども同じように2つの契約になっています。

 

【電灯の契約】自由化でどうなる?

2016年4月から電力自由化が始まりますが、
2017年4月からガスの自由化も始まります。
大手電力会社は30分ごとの電気使用量がわかるスマートメーターの設置を開始しています。またガスのスマートメーターを開発中です。

そしてスマートメーターとつながるHEMS(Home Energy Management System)は、家電製品やコンピュータと携帯やインターネットともつながります。

スマートメーター導入イメージ図
出典:東京電力 http://www.tepco.co.jp/smartmeter/index-j.html

ガス、携帯、通信会社など他業種と提携した「セット割」


スマートメーターやHEMSにつながるガス会社、携帯、通信会社などと一緒に使用料を請求すると安くなる「セット割」を各社予定してます。

東京電力は、ソフトバンク、日本瓦斯、USENなどと提携予定です。
安くなるメリットもありますが、携帯電話のように2年縛りなど簡単に切替えられないデメリットがあるかどうかも確認してください。もちろん新電力も各社と提携たセット割が出てくるものと思いますので、様子を見ながら判断された方が良いでしょう。


PontaやTポイントなど「ポイント付加サービス」

 

東京電力はPontaTポイントと提携。一方、新電力の「ENEOSでんき」もTポイントと提携。もうポイント付加されてあたり前で、電力選択には重要事項ではなくなるでしょう。

 

再生エネなど、電力の内容によって購入先を決める

「クリーンな電力を供給します」などの言葉で宣伝できないなど広告規制があります。

再生可能エネルギーによる電力を広告・宣伝する例。出典:資源エネルギー庁           再生可能エネルギーによる電力を広告・宣伝する例。出典:資源エネルギー庁

小売事業者が再生可能エネルギーで作った電力を販売する場合には厳しい規制を受けることになる。固定価格買取制度の適用を受けた電力に対しては具体的な説明を義務づける方針だ。政府が検討中の説明文は極めて回りくどい表現を使っていて、消費者の購買を手助けするものとは言いがたい。とりわけ「CO2フリーの電気とは異なる」という説明は誤解を招く恐れがある。 http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1506/29/news030.html

少々高くても再生エネルギー100%の電気を買いたい人は、具体的に問合せて聞くしかなさそうです。
個人的には、再生エネ100%にしたいと考えていますが。


10月位から各社の電力料金が発表になるので、充分に見極めてから決めてください。

なお「マンション一発受電」契約をしているマンションにお住まいの方は、個別に選択することはできません。マンション一括受電とは、安い電力をまとめて買って入居者の電気料金を安くしたり、共益費に充当するサービスです。

その他、スマートメーターからHEMSへの情報提供(Bルートサービス)による各種サービスも出てきます。
携帯電話などのような2年縛りは無いと思いますが、次から次に新料金、新サービスが出てくるので長期契約は避けた方が良さそうですね。

 

【低圧の契約】自由化でどうなる?

 

低圧の契約は、主開閉器契約と負荷設備契約の2つあります。

低圧電力の契約電力の決定方法

東京電力:低圧電力の契約電力の決定方法

http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/home12-j.html

主開閉器契約とは、例えば工務店で電動ノコギリなど10台あるが、一度に使用するのは従業員含めて3人なので、最大3台分として15kWの契約電力にするなどの決め方です。

負荷設備契約とは、10台分合計で35kWを少し小さくして30kWの契約電力いするなどの決め方です。

この他にも、電灯と低圧を1つの契約にした「おまとめプラン」(東京電力)や低圧時間帯別契約(北海道電力)などがありますが、概ねこの2通りの契約です。

 

低圧の契約は、電灯の契約よりも基本料金が高く、使用量料金が安くなっています。
電灯:基本料金(10A につき280.80円)使用量料金(19.43〜29.93円)
低圧:基本料金(1kWにつき1101.60円)使用量料金(夏季16.97円、その他季15.42円)

低圧の契約では、いかに基本料金を下げるかが電気料金を下げるポイントです。インバータエアコンへの交換や省エネタイプの電気機器に交換して下がった電気料金は使用量料金が下がっただけで、基本料金は高いままずっと払い続けて損をしている店舗や工場が多いのです。

低圧の基本料金の変更は、電力会社へ申請が必要です。それも電気工事店からの申請を基本としてますが、機器販売会社も工事店も、知っていても手続きが面倒なので、申請のアドバイスをしないことが多いようです。
また負荷設備契約を主開閉器契約に変更して基本料金を下げる方法もあります

その他、電子ブレーカーを利用する方法もありますが、長くなるので別ブログにします。

低圧は電灯に比べ契約数は約1/10と少ないが使用量は多いのですが、販売方法が面倒なので小売事業者は後回しするかも知れません。また、ここをターゲットとする小売業者が出現することも予想されます。

さらにはスマートメーターの設置が進むと実量制(デマンド)にする小売事業社もいずれ現れるかと思います。

いずれにしても10月頃から各社の販売金額など発表になるかと思いますので比べてみてください。これらの解説も逐次アップしていきます。

                        著作:辻川英章